秋に食欲が増す理由
○暑さが和らぐ秋は、過ごしやすい季節と言えます。一方で、秋は旬の食べ物が多いことや、夏よりも食欲が増しやすいことなどから、つい食べ過ぎてしまい、体重が増加してしまうケースも珍しくありません。秋に食欲が増すのはなぜなのでしょうか。食べ過ぎを防ぐにはどうしたらよいのでしょうか。そこで、以下の質問です。
Q.秋になると食欲が増すことがあるようですが、なぜなのでしょうか。考えられる理由について、ご教示ください。
秋に食欲が増すのは、諸説ありますが、代表的な5つの説についてご紹介します。
- 気候が快適説
夏はうだるような暑さから、夏バテで食欲不振や疲労感を感じる人は多いと思いますが、秋になると気温が一変して急に涼しく過ごしやすくなり、低下していた食欲が回復してきます。 そのため、秋は食欲が増したように感じます。
- セロトニン分泌低下説
脳内で作られるセロトニンは、食欲を抑える作用があり、その分泌量は日照時間に比例すると言われています。秋は、夏より日照時間が短くなることでセロトニンの分泌が減り、食欲が増すと考えられています。
- 基礎代謝上昇説
秋は夏より気温が低下し、身体は体温を維持しようとするため、基礎代謝が上がります。結果、その分エネルギーを必要とするため、それを補うために食欲が増すという説です。
- 美味しい食材の収穫増加説
『実りの秋』と言われるように、秋は新米、梨、ブドウ、芋など穀物、野菜、果物などたくさんの美味しい食材がたくさん収穫され、私たちの食卓にも並びます。そのため、食欲が増すという説です。
- 冬に対する栄養備蓄説
冬になると、食材が少なくなるため、厳しい冬を乗り越えるため、たくさん食べて、栄養やエネルギーを身体に蓄えようと動物としての本能が、冬眠をする熊と同じように人間にも残っているため、秋に食欲が増すという説です。 食欲が増す理由を知っていると、食欲をコントロールしやすくなりますので軽く頭に入れておくと良いでしょう。
Q2.秋に食べ過ぎを防ぐには、どのような対策が有効なのでしょうか。食欲を抑制する方法やお勧めの食べ物(満腹感を得られる食べ物など)について、ご教示ください。
食べ過ぎの原因には、ストレスや糖質の摂り過ぎ、睡眠不足、栄養不足、ホルモンバランスの変化などがあります。
- ストレスを感じると、脳内で「コルチゾール」「ノルアドレナリン」「ドーパミン」といった、食欲促進作用があるホルモンの分泌が増え、過食につながります。
- 糖質の多い食事を摂ると、急激に血糖値が上昇し、膵臓から血糖を下げるインスリンが大量に分泌されます。インスリンが大量に分泌されると、急激に血糖値が下降する『反応性低血糖』を招きます。低血糖になると自律神経が乱れ、強い空腹感から過食に繋がります。
- 睡眠時間が短いと、長く活動した分だけ、エネルギーを確保しようと、食欲が湧くグレリンというホルモンの分泌が増えます。また、食欲を抑えるレプチンというホルモンの分泌が低下します。その結果、過食に繋がりやすくなります。
- 食事のバランスが悪いと、本来必要な栄養素が不足し、足りない栄養素を補うために、つい食べ過ぎてしまう原因になることがあります。
- 女性の場合、生理前になるとプロゲステロンという女性ホルモンの分泌が急激に増えます。このホルモンは妊娠を成立、継続させるホルモンで、食欲を亢進させるとともに、味覚や嗜好が変化し、偏食気味になってしまう傾向があり、過食につながりやすくなります。
ですから、過食を防ぐ方法として、常に腹8分で食べ過ぎないことに気をつけるとともに、ストレスを溜めない、睡眠はしっかりとる、糖質過多にならないよう食事のバランス、多様性に注意する、生理前は、なるべく満腹感の得られるカロリーの少ないものを選んで食べるなどの工夫が必要です。あと、低血糖にならないよう、食事と食事の間を空けないよう1日3食できるだけ規則正しく食事をとること、脳の満腹中枢を刺激するよう、ゆっくりしっかり噛んで食事をすることも大事です。
食欲を抑える満腹感が得られる食材
ポイントは、水分が多く含み、食物繊維、タンパク質が多く、糖質の少ないものを選んで食べることです。
- 食物繊維は、腸内環境を整えてくれるだけでなく、血糖上昇抑制効果や血液中のコレステロール低下効果などもある優秀な栄養素です。カロリーも低く、満腹感も得られやすいです。お勧めの食材は、海藻、きのこ、青菜、芋、アボガド、玄米ご飯です。
中でも、ワカメは水分を含むと膨張し満腹感を得られやすく、低糖質で、ぬるぬる成分のアルギン酸カリウムとフコイダンという優れた食物繊維を大量に含んでいます。詳しくは、過去の記事『ワカメの食べ過ぎに注意』を読んでくださいね。
加工品としては、こんにゃく、ところてん、納豆、豆腐、おから、ナッツなどがお勧めです。
- タンパク質は消化に時間がかかり、胃腸に留まっている時間が長いため満腹感が得られやすいです。また、体の筋肉や皮膚、髪、骨などの構成成分や各種酵素、消化液の材料として必要なもので、現代人の多くは不足しがちです。日頃から、しっかり取り入れましょう。ダイエットとしては、鳥のささみや胸肉、ゆで卵、赤みの肉、レバー、納豆、豆腐などの大豆製品、魚などがお勧めです。
満腹感が得られるためには、前述のゆっくりよく噛んで食べて満腹中枢を刺激することや、食前に炭酸水を飲むこと、食事の食べ始めを野菜から食べるいわゆる『ベジタブルファースト』も有用ですのでぜひ取り入れてくださいね。
Q3.秋に旬を迎える食べ物のうち、体重増加の原因となる食べ物がございましたら、ご教示ください。
『食欲の秋』と言われるほど、秋の味覚はとても美味しく食欲をそそるものが多くありますね。その中でも、秋は美味しい果物がたくさん採れます。果物は砂糖の1.15~1.73倍の甘みを感じる「果糖(フルクトース)」が含まれており、ブドウ糖と同じく糖がこれ以上分解されない単糖類です。果物を食べるとすぐに消化吸収され、血糖値が急上昇しやすく「果物は太る」とイメージされますが、正しくは、「果物は食べ過ぎれば太る」です。果物は確かに甘い糖質を含みますが、低GI食品であり、血糖値の上昇は緩やかです。また、糖質以外に食物繊維・ビタミンC・カリウム・ポリフェノール・食物酵素、ミネラルなどの栄養素を含みます。「適量」を心がけていれば、私たちの美と健康を底上げしてくれる嬉しい食材です。ただし、果物を食べすぎると、糖質の過剰摂取により中性脂肪の増大や肥満をきたすおそれがあります。また、食べるタイミングは朝がお勧めです。ダイエットを目指しているのなら、一緒に摂るごはんなどの炭水化物は糖質過多にならないよう控えめにすることがポイントです。中でも、ぶどうは、100gあたりのカロリーは69kcal、糖質は16.0gと多く、ダイエット中の食べ過ぎには注意しましょう。
秋は、たくさんの野菜も収穫されます。秋野菜は夏野菜に比べて水分が少ないため、味が濃く甘みが強いのが特徴です。中でも代表的な芋・栗・南瓜は糖質が多く野菜の中でもカロリーが高い部類に入ります。秋野菜はとても美味しく栄養価も高いですが、糖質の多いものは食べ過ぎに注意しましょう。 秋は旬を迎えるサンマやサケなどの魚も脂がのっており、通年で出回っているものと比べるとカロリーが高くなります。イワシなどの青魚に含まれる『EPA(エイコサペンタエン酸)』と『DHA(ドコサヘキサエン酸)』は、LDL-コレステロール、中性脂肪を減らす働きがあるオメガ3系の必須不飽和脂肪酸です。EPAは、血液をサラサラにする効果もあり、血栓や動脈硬化のリスクを下げることが期待できます。また、EPAは脳卒中や心筋梗塞などの予防にも効果的だとされています。DHAは脳の灰白質や網膜、神経中に存在していて、柔らかい細胞膜や複雑な神経細胞を形成するのに必要な栄養素です。さらに、DHA、EPAは、体の炎症、アレルギーを抑える働きも持っています。ぜひ、旬の青魚は食材に取り入れて欲しいものです。ただし、美味しいからと言って食べ過ぎには注意しましょう。
最後に、秋は運動の季節です。食後に散歩や、ジョギングをすることで血糖の上昇を抑える効果があります。運動や食事をたくさん楽しめる素敵な季節です。血糖をコントロールしながら楽しい秋にしましょう。